vol.15 トランプ大統領就任と中国経済

2017年1月20日、アメリカ合衆国の第45代大統領にドナルド・トランプ氏が就任しました。就任式の開催に合わせてワシントンを始めとして全米各地でデモや暴動が起きるなど、少なくとも自分の記憶では歴代の大統領就任式ではこのような光景を見たことがなかっただけに、米国民の反応に大変驚くと同時に政権運営の先行きに改めて憂いを深めざるを得ませんでした。

一方、これまで選挙前から就任までの間、女性蔑視や人種差別発言などトランプ氏のエキセントリックな人品骨柄ばかりがクローズアップされてきましたので、就任演説ではきっと彼の国家観や政権運営のビジョンが語られるに違いないと淡い期待を寄せていたのですが、見事にその期待を裏切られました。「アメリカ製品を買え」「アメリカ人を雇え」などといったかつて30年前の日米貿易摩擦の頃を彷彿とされるような話、イスラム過激派を一掃するなど、大統領の就任演説としてはあまりにも些末な内容に唖然としてしまいました。選挙前から主張していた減税や規制緩和、インフラ投資などにもほとんど触れることなく、就任式直後にはTPP交渉からの離脱表明、NAFTAの見直し着手の大統領令に署名したと発表されましたが、どれも目新しさには欠ける内容でした。

ところで、先のブログ(vol.12 トランプ砲に慄く日本企業)で触れましたが、今回トランプ氏が大統領に就任したことで私が懸念しているのが、米国と中国の関係、とりわけ米中の経済構造に及ぼす影響です。米国ではトランプ氏の当選を機に、先に述べた経済政策が実行されると国内景気の拡大が期待されることから、既に米国債の長期金利の上昇によってドル高基調に転換しています。一方、中国では人民元の切り下げが行われる中、国外への資本流出に歯止めが効かない状況が続いています。

トランプ氏は中国や日本、メキシコなどとの貿易不均衡を是正すべく、保護主義政策を唱え外国製品の輸入を抑制しようとしていますが、特に米国の貿易赤字のおよそ45%を占める中国との貿易赤字を解決しなければ、彼の経済政策を実現することは困難です。そこでトランプ氏はドル高是正を目的とした中国も含めた第二の「プラザ合意」を仕掛けてくるのではないかと今囁かれています。

1985年のプラザ合意によって日本はバブル景気に突入し、その後のバブル崩壊を起点として失われた20年を経験しました。先日2016年の中国GDPが6.7%増と発表されましたが、その中身を見ると公共事業の投資が圧倒的な伸び率を示す一方で、民間企業の投資は3.2%増と低迷し、既に経済の先行き不安から企業や個人が投資や消費を抑えていることがわかります。先に述べた資金の国外流出にもその心理が表れています。そのようなオーバーヒートの状況にある中国を含めた新プラザ合意が導入されたらどのような事態が起きるのでしょうか。日本がかつて経験したようなバブル崩壊の二の舞どころか、もっとスケールの大きい、例えば中国発の世界恐慌のような危機を招きかねないのではないでしょうか。

財務省の貿易統計によると日本からの対中輸出は13兆円で電気機器や一般機械が品目の上位を占めており、中国進出している日本企業が中国に置く拠点は3万以上にも及ぶとされています。今年は上記のリスクを織り込みながら海外展開の見直しも視野に入れ、経営戦略の練り直しを検討する必要がありそうです。

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