vol.12 トランプ砲に慄く日本企業

一昨日の株式市場は大発会を迎え日経平均株価は400円を超える大幅な上げ幅をつけ昨年来高値を上回りました。為替も1ドル118円台と昨年11月からのトランプ相場による金融市場の強気のモメンタムは止まるところを知りません。
しかし、年頭の企業トップたちの所感は一様に「不確実性への警戒」「変化への対応」など、米国トランプ新政権の発足に対する警戒感を滲ませたコメントが見られました。

現在は未だ就任前ということもあり、トランプ次期大統領の政策の全容が詳らかになっているわけではありませんが、選挙前から明言しているのは大型減税と公共投資を主軸として米国経済の活性化を図るという姿勢です。貿易や雇用に関しても自国への利益誘導政策を打ち出しているため、米国と強い関係性を持つ周辺国が戦々恐々としている様子が連日報道されています。

米国ではトランプ氏が「大型減税」と「公共投資拡大」の政策を打ち出したこと、加えて規制緩和の思惑も手伝って、米国経済の成長期待からニューヨークダウ平均株価は史上初の2万ドルに迫る勢いで連日上昇しています。そして、日本でもこの動きを受けて、トランプ氏の勝利を境に政策期待から米国債の長期金利が急上昇したことでドル高円安基調に転じたことから輸出系企業を中心とした大型株の多い日経平均株価が、これも2万円を目指して上昇している状況です。

世界的にリスクオフの流れの中で、米国のトランプ政策に対する評価は、財政赤字が予想されるものの景気拡大への期待感が勝っており、そのため米国債の長期金利上昇によってドル高円安に転じたことが日本株上昇の理由のようですが、トランプ氏の基本姿勢は保護主義を唱え輸入関税の引き上げや貿易赤字の解消で自国経済を守ることですから、いずれはドル安方向へと修正される懸念もあり、その場合、為替との相関性が強い日本株は下落に転じるおそれもあるわけです。

そんな懸念を助長するかのように本日早朝に飛び込んできたニュースでは、トランプ氏はメキシコでの工場建設を進めようとしているトヨタ自動車に関して、自身のツイッターで「工場建設は米国内にすべき。さもなくば重い輸入関税を課す」と警告したそうです。就任前とは言え一国の大統領が一企業の経営方針に口出しするなど、かつては考えられなかったことですが、今では世界で最も影響力のある次期大統領の軽々しい発言がSNSで発信され、その結果市場が右往左往するような不確実な世の中なのです。

経済原則から言えば、メキシコの6倍の人件費が掛かる米国で雇用を増やせば製造原価は跳ね上がり、高い関税を課して輸入すればそれも車体価格に上乗せされるわけですから、結局はトヨタ車を購入したい米国の消費者にしわ寄せが来てしまうのは明らかです。何よりも一国の政府が個別企業をターゲットに関税を掛けるなどできるわけがないのですが、まるでトランプ氏の言動は自国民や共和党の反応を見ながら世界を揺さぶって駆け引きを楽しんでいるようにも映ります。既にフォードなどはメキシコからの撤退を表明しており、国是国策に反した企業行動は慎むというのが一企業にとっては正しい危機管理の姿勢のようですから、今後のトヨタの動きが注目されるところです。

正式に大統領に就任すれば、さすがに個別企業の経営に口を出すようなことは慎むものと思われますが、政策立案の中でトランプ色を色濃く反映しながら関係国にプレッシャーをかけてくることは十分に予測できます。そうなるとやはり米国経済との関係性が強い日本企業は難しい舵取りが迫られるため、最悪のシナリオも想定しながら海外戦略を見直す動きが加速化するでしょう。今後しばらくは日本にとっては政治的にも経済的にも米国に振り回されるばかりか、フランスをはじめEU主要国で引き続きポピュリズムの台頭が懸念されることもあり、戦後70年を経て本当の意味で正念場を迎える年になりそうです。

そして、今は新政権への移行で米国に目が奪われがちですが、実は米国以上にもっと注視しなければならないのは中国の動向ではないかと私は思っています。その理由については改めてブログで触れたいと思います。

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