vol.5 既存顧客向け営業戦略①

前回までは新規顧客を発掘するための戦略を考察し、現在のように成熟したモノ余りの時代では、新たな発想で攻めなければ売上を維持し続けることも難しくなっていることを述べました。今回はBtoB取引における既存顧客に対する営業戦略についてご紹介します。

インターネットの登場で新規開拓も随分と楽になったと言われますが、それでも既存顧客に拡販を仕掛けるのに比べると遥に難しいでしょうし、何倍もの労力が掛かると思います。既存顧客への拡販展開はどうするべきかという問いに対しては、ずばり、顧客に対して拡販の余地があるかを細部にわたって検討することに他なりません。そこで登場するのがABC分析(パレート図)とランチェスター戦略です。

この2つのフレームワークの詳しい説明は割愛しますが、それぞれの仕組みを用いて拡販余地を判断するに当たっては、顧客売上額と納入シェアの2種類のデータさえ揃えば分析できます。納入シェアはそれなりの調査が必要になりますが、このシェアは絶対値ではなく、他社と比較して自社の納入シェアは何倍か何分の一かという相対的シェアになりますので、比較的入手は容易なのではないでしょうか。日々の情報収集活動で感触を捉えることも可能でしょうし、顧客との雑談の中で直接聴取することも難しくない作業のはずです。

また、世に出回っている指南書の中には、自社売上額ではなく顧客の総需要が必要だと書かれているものもありますが、確度の高いシェアが入手できるならば売上額と納入シェアから大まかな総需要額も推測できますので、無理にヒアリング調査をかけて総需要を入手する必要はありません。

さて、これらのデータを大凡把握できたらABC分析を行います。まず売上額順に上位からソートをかけ、上位からA(大口先)、B(中口先)、C(小口先)に格付け分類します。ABCの基準については、例えば売上額累計で上位80%までをAランク、同80%~90%をBランク、同90%~をCランクと格付けすると、Aランクの社数は全社数の2割、Bランクは同1割、残り7割はCランクと分類されます。これが「売上の8割は上位2割の顧客で占められる」と言われる所以です。あるいは売上額そのもので格付けするのも良いでしょう。例えば売上月額300万円以上の顧客をAランク、月額100万円以上300万円未満をBランク、残り100万円未満をCランクなどとすると、より重要顧客の色彩を強く表現できるのではないでしょうか。

次に、納入シェアについてもabcに格付け分類します。先ほども述べた通り、必要な納入シェアとはあくまでも競合者間の相対的数値となります。分類の一例として挙げると、自社が断トツ1位で2番手の倍以上のシェアを確保している場合はa、次に各社シェアが拮抗していてトップと2番手が0.5~2.0倍の場合はb、自社がトップの2倍未満の場合はc、などと格付けします。

これら2つのデータの整理ができたら、ABCとabcを縦横のマトリクスに並べた表の各欄ごとにどのような営業活動を展開するのかを決めます。例えばAaは守りの営業、AbおよびAcは攻めの営業、Bbは攻めるがBcは現状維持、Caは現状維持だがCbとCcは放置するなどと、顧客ランクに応じた営業スタイルを決めていきます。さらにランクごとに顧客の重要度をⅠ、Ⅱ、Ⅲと設定することにより、同じ攻めの姿勢でも重要度の高い顧客には密度の濃い営業活動をするなどと濃淡をつけることもできます。

この格付け分類により、重点先と非重点先を分けることができるため、営業活動の効率が飛躍的に高まることになり、今まで思いつきや行きやすい顧客ばかりに訪問していたような営業活動から脱却することができます。このような格付け分類をすると、例えば実際には100社以上の顧客を担当している営業担当者であっても、集中して訪問、商談をすべき重点顧客は10社程度しかなかったということもあり得るのです。だからといって、非重点先である残り90社は捨てるということではなく、訪問回数を極力減らし、通常はメールや電話、あるいは事務方に任せて、どうしても必要なときのみ訪問するなどとルールを決めてメリハリある営業活動を展開すれば良いのです。

この格付け分類による営業は、ABC分析とランチェスター戦略を組み合わせたターゲティング戦略の一つですが、継続して取り組むことで大変な効果があるはずです。 次回はその継続的な取り組みについて、どのようなマネジメントが効果的なのか考えてみたいと思います。

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